【書評】山本七平「池田大作と日本人の宗教心」を読む

 山本七平氏の本はほとんど読んでいるのですが、以前書店に行ったところ、たまたま新しい本が並んでいたのでさっそく購入しました。「池田大作と日本人の宗教心」(さくら舎)です。
 池田大作氏と創価学会について、評論家山本七平氏がどう書いているのか、大変興味があります。ただ、新しい本とは言っても、もちろん氏はとうの昔に亡くなられていますから、過去の雑誌に載せた記事を集めています。よって、山本氏が創価学会について、最初から一冊の本として出すために体系的に書かれたものではない、ということに注意する必要があります。

 本では、まず昭和40年代に創価学会批判の本を出版しようとした人たちを妨害する話が出てきますが、なかなか凄いものです。著者に対して全部購入するから売るなと持ちかけたり、出版社や印刷会社に圧力掛けたり、そして自民党の大物政治家が出てきたりして、あの手この手で批判本を出版、販売させないようにしたと。今から思うと本当にそんなことが日本であったのか信じられませんが、創価学会には力だけでなく当時は意図もあったわけですね。現在はさすがにそんなことはしませんが。

 次は本山である日蓮正宗との紛争の話です。日蓮正宗の教義から見ると本山、法主の方が偉いわけで、創価学会側も最初はへりくだりますが、圧倒的な信者数と資金力を背景に自分たちのやり方を展開していき、本山に反することも行うようになります。それを本山側は当然とがめます。最終的には日蓮正宗から破門されるわけですが、端から見ていると損得考えれば、創価学会側はさっさと独立すればよいと思うのに、なかなかそうしなかった。そこを山本氏が得意の宗教の観点で見ていくのが面白いところです。

 世間的に最も興味があるのは、なぜ創価学会がここまで大きくなったのかということであろうと思います。前述したように体系化した本ではありませんので、山本氏も簡単にしか触れていません。
 農村から都市への移住が増加して地域共同体から切り離された、というのが第二次大戦後に新宗教が拡大した理由の一つですが、中でも創価学会は徹底して現世利益を説いたのが大きい。最初は日蓮正宗の信徒ということだったので、新宗教の信者ではなく伝統仏教の信者であるという安心感があった。また、敗戦によって軍国主義がすべて否定されて精神的な空白を生じた人にぴたりと合ったのではないか、という説明されています。最後のは興味深いですね。軍国主義といっても当時はみんな正義、善意だったわけですが、他の人を折伏して信者にするというのも同じく正義であり善意でした。創価学会を熱心に信仰して布教した人に、その達成感は大きかったのでしょう。

 本書は創価学会について一冊だけ読む本としてはあまり向いていないかもしれませんが、何冊か読むのならば、これも選んで損は無い本です。もちろん山本七平ファンなら必読です。