伊勢神宮のパワースポット

 伊勢神宮こと神宮のパワースポットについて、神主としてはパワースポットという英語を使うのは好きではないのですが、そう言われているところについてお話ししていきます。神主から見ると不思議なところを指定しているように感じます。

*四至神(みやのめぐりのかみ)

 内宮の神楽殿の横を過ぎて参道を進むと、左の前方に見えてきます。
 しめ縄で囲まれ、石畳が設けられて、石が置かれています。これがパワースポットと言われているようです。この四至神(みやのめぐりのかみ)は神社の四囲をお護りになる神さまです。

 実は四至神は外宮にもお祀りされています。

 外宮神楽殿の西側、参道から右手を見ると屋根と柱があって壁のない建物が二つあります。九丈殿と五丈殿と言いますが、その手前に一本の木があり、根元は石で囲まれています。これが四至神です。しかし、こちらはパワースポットとは言われていないようです。この辺りは大庭(おおば)といってお祭りが行われることがある重要なエリアですので立ち入りできないようになっています。しかし、同じ神さまをお祀りしているけど、片方はパワースポットと言われて、片方は言われていないようです。不思議ですが。

*川原祓所

 外宮でもう一つパワースポットと言われているらしい所が、通称「三つ石」です。正式には川原祓所(かわらのはらいしょ)といいます。式年遷宮ではたくさんのお祭りが行われますが、その中で、あるお祭りにおいてお祓いが行われる場所なのです。
 そのような場所ですから周囲にしめ縄が貼られています。以前は紙垂(しで)もつけられていた事もありました。真ん中に石が三つ置かれています。見た目なんか大切な場所なのかな、とわかりやすいですね。たまにしめ縄を越えて身を乗り出して手をかざしている人が見られます。端で見ているとあまり格好良くは見えません。

 神宮だけでなく、他の神社でもパワースポットと言われているところを見ると、実はビジュアルに非常に影響されているらしいという事に気がつきます。内宮の四至神にしろ外宮の川原祓所にしろ、しめ縄で囲われて、白い石畳だったり石が三つ組んであったりして、誰が見ても大切なところであることがわかります。
 いわゆる霊能者、霊感がある人というのは、一般人が感じられないことを感じられる人ということですが、パワースポットに関しては、どうも誰が見てもちょっと違うとわかるところを指定していように思います。

*瀧祭神

 最近新たに聞いたのは「瀧祭神(たきまつりのかみ)」です。内宮の五十鈴川の御手洗場(みたらし)から参道を戻る右手にお祀りされています。ここは社殿がありません。石がお祀りされています。五十鈴川の水の神さまがお祀りされています。
 古代から社殿がなかったそうですが、ここも石畳の上に石がお祀りされている、というビジュアルから、パワースポットだと言い出す人が出てきたのではないか、という気もします。以前は誰も人がいなかったですが、最近はたまにお参りする人を見かけます。これは最近は神宮の別宮や小さなお社もお参りされているからかもしれません。それはよいことです。

*外しの論理

 以上、ご紹介した所はすべて神さまをお祀りしているところですから、もちろん大切なところではあるのですが、それより御正宮の方が遥かに重要であることは自明のことです。ということはパワーが一番あるところといえば当然、御本殿、御正宮ということになります。
 しかし、一部の霊能者や占い師といった人たちは、その当たり前を言ってしまうとネタになりません。違うことを言わないと話題になりませんから、少し変わったところをパワースポットだと言い出すようです。これを私は「外しの論理」と言っていますが、当たり前を当たり前に言っては独自性がありませんし、興味も引けません。神宮でも四至神や川原祓所だけでなく、瀧原宮や伊雑宮が一番パワーがあるという人がいたりします。所管社が125社ありますから、いずれまたここから探してきてくる人も出てくるでしょう。
 以前はその霊能者と占い師の人が書く本とかだけの影響だったのですが、最近はインターネットの影響で、この手の外しが大きく広がるようになりました。また、ネットニュースやキュレーションサイトと呼ばれるような所も、読者の耳目を引いてページビューを上げるために、実は本当のパワースポットはここです、みたいに煽る記事を作っているようです。しかし、そのようなものに惑わされてはいけません。

*やっぱり御祈願が最良

 とはいえ、パワーが欲しいというか、おかげが欲しいと思うのは自然なことでもあります。どうすればよいのか。それには御祈願(御祈祷)を上げてもらうのが一番ではないでしょうか。神宮の場合は御初穂料の金額によって「御饌(みけ)」と「御神楽」に分かれています。やはり大切なものを神さまにお供えするというのが神道では重要なことであって、それによって神さまにさらに御守りいただけます。

*解説の本

 四至神や川原祓所など、神宮の境内を歩いていると、ここは何なんだろう?とかここにお祀りされている神さまはどういう神さまだろうと思うことがないでしょうか。
 最近は神宮を詳しく説明した本が出版されていますので、それらでも構いませんが、個人的には『お伊勢まいり』(伊勢神宮崇敬会発行)という本をお薦めいたします。書店で売っているのかはわかりませんが、内宮の休憩所内の授与所で扱っているのを見ました。
 神宮について詳しく知りたい方、また何度もお参りに来られる人にはぜひお薦めします。